呪われ姫と強運の髭騎士

(4)

「凄い……」
 
 ソニアは思わず呟いた。
 
 人がいるはずのない閉じられた祈祷所。

 その内から破裂音と共に撓るほど軋む扉は、誰が見ても異常だ。

「ここまで自己主張の強い奴だったとは思いませんでした」
 
 ソニアの傍らで、クリスが感心している。

「クリス様に見破られて怒っているのかも……」
「……調べたら簡単に調べられましたよ? 彼がファーンズ司祭だということは」
「――いえ、そちらではなくて……」
 
 ソニアがクリスの疑問に口を開いた時――
 
 バン!
と、けたたましく祈祷所の扉が開き、風が流れる。
 
 まるで竜巻のようだ。

「キャア!」
「ソニア様!」
 
 あっという間に巻き込まれ、部屋に吸い込まれてしまった。
 
 宙に浮いたソニアを抱き締めたまま部屋に吸い込まれたが、入った途端に竜巻は止んでしまった。
 
 浮いたままに止んだので、そのまま床に二人落ちる。
 
 ソニアはクリスに守られる形で落ち、代わりにクリスが身体を殴打してしまった。

「お怪我はありませんか? ソニア様」
「私は大丈夫です。クリス様は……?」
 
 心配そうに眉を下げたソニアに、
「私は大丈夫! 鍛えておりますから!」
と安心するようにと微笑みを見せた。
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