呪われ姫と強運の髭騎士
「――離れなさい」
 
 クリスが、背負って来た剣を下ろす。
 
 包んでいた布を外したその剣を見て、彼から笑いが消えた。
 
 白金の造りの剣は、光が差していないのに神々しく輝いて、自ら光を発しているように見える。

 <クッ……貴様が持っていたとは……! あれだけ探して壊そうとしていたものが……!>

「ファーンズ、この剣はずっと中央教会に大切に保管されていた。見えなかったのは――これのお陰でしょう」
 
 クリスが、剣をくるんでいた布を掲げた。
 
 十字架を刺繍したダルマチィカ。

「前教皇がその信仰心の全てを注いだ聖衣――それが目隠しになって、貴方には見えなかったのです」
 
 <なんと言う! 同じ神に仕える身である教皇がクレア家の悪行を支援するとは……! 前教皇まで神に背いて――赦されるべきではありません!>
 
 余程衝撃だったのか、宙に浮くパメラの身体がグラグラと不安定に揺れていた。

「黙れ!」
 
 クリスの怒鳴り声が、がらんとした祈祷所に響く。

「まだ気が付かぬのか、ファーンズ! 貴様はもう地に堕ちているのだ!  聖なる衣に変化を遂げた前教皇のダルマチィカによって隠された剣が見えなかったのは、貴様の目が悪魔によって穢れたからだ!」

 <何を検討違いな意見を! この力は神が私に授けてくださった物! 神が私にこの力でクレア家に罰を与え、そしてクレアの地を治めよ!――そう仰っているのですよ!>

「――では、加護魔法を修得した私の一太刀を受けても平気なはず」

 <ぅう……>
 
 悔しげに呻くファーンズは、パメラの身体ごと床に降りた。
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