呪われ姫と強運の髭騎士
「貴方達! 扉の外にいたの?」
「クリス様の命令です。万が一、危機があったらソニア様を避難させるようにと!」
 
 執事頭がパメラを抱き上げて避難する中、マチューもソニアを祈祷所の外へ連れ出そうと抱き寄せた。

「――駄目、離して!」
 
 ソニアはマチューの腕を振り払う。 ヒヤシンスブルーの瞳に、意志を乗せて。

「今が呪いを払うチャンスなの!お父様やお母様、それにお兄様達にお祖父様達の不幸を繰り返さないためにも!」
 
 そう大きな声で告げながら、ソニアはクリスの横に転がっていた剣を取る。

「私にはクレア家を守らなくてはならない。そして、この地に住む民達の生活を、守らなくちゃいけない。パメラやマチューや、助けようと手を差し伸べてくれたクリス様――私を思ってくれる人達のために引かないわ!――私にはこの呪いを弾く意志があります!  あいつになんか負けたりしない!」
 
 ソニアは今だ、もがき苦しんで床を転がっている白い真綿のような物体目指し、ヨタヨタ歩いていく。剣を引きずりながら。

「お、じいさま……!  剣を握るのが女かも知れないってことも……毛頭に入れて作って……!」
 
 重すぎて持ち上がらない。剣先が床につく。それでもソニアは渾身の力を込めて、剣を持ち上げようと足を踏ん張る。

(守るのよ、 絶対に!)
 
 ――その時、後ろから剣の柄を共に持ち、剣を上げる者がいた。

「ソニア様!  お待たせしました!  私もお手伝い致しますぞ!」
 
 額から流れる血など気にする様子もなく、朗らかに笑うクリスだった。
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