呪われ姫と強運の髭騎士
「お腹、お空きですか?」

涎が出そうな勢いのクリスに、ソニアは「食べます?」と首を傾げた。

「――あ、いや……! 失礼。いい歳して食い意地が張っていて、お恥ずかしい限りです」
 照れを隠すかのように短い後ろ髪を撫でるクリスを見て、ソニアもついクスリと笑ってしまう。

「食べちゃいましょうか?」
と、ソニアは促すがクリスがいやと首を振った。

「……でも、大丈夫ですか?」
 
 クリスはソニアの目から見ても武人らしい、逞しくてがっしりとした大きな身体付きをしている。
 ソニアはそんなに動かないし、修道院の生活で質素な食事に慣れているから、それほど食べなくても平気だ。
 
 だがクリスは、やはりその身体に見あった量を食べないと辛いだろう。

「私に合わせていただかなくても良いんですよ?――お召し上がりになって」
 そう付け加えて、バスケットごとクリスに渡した。
 
 クリスは受け取ったが、すぐに蓋を閉じ、横にしまう。

「クリス様?」
 
 目を瞬かせるソニアにクリスは
「しばらく行った先に、とても良い休憩所を見付けてあります。そこには丁度、日が昇る頃に着くでしょうから、そこで食べましょう」
 そう笑いかけた。
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