呪われ姫と強運の髭騎士
「何……、これ! うそっ!」
 
繊細な飾りが入った銀細工のロザリオは、真っ黒に炭化していたのだ。

「何がどうなっているの? いや、怖い! 誰か!」
 
ソニアは叫ぶと泣きながら寝台に突っ伏した。

お父様、お母様! アレクシお兄様! 助けて! もう嫌!」
 
両親や兄の名を呼んで泣くのは、幼い頃に家族を亡くした時以来だ。
 
急に一人になった孤独、不安、悲しみ――言い様のない消失感。
 
それでも立ち直って、何とかやってこれたのは自分がまだ幼かったのと、周囲が優しく手を差し伸べてくれたからだ。
 
――だが今は
 
自分はもう結婚相手がいて、もうすぐ結婚する。
 
要するに大人なのだ。
 
この莫大な遺産を受け継いで、主人として切り盛りしていかなくてはならない。  
今度からは逆に自分が相談役になる立場なのだ。

「だからって、こんな事態、どうしていいか分からないわ!」
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