呪われ姫と強運の髭騎士
 パメラとはこの修道院に来てから、ずっと同じ部屋で寝起きしていた。
 
 行儀見習いで入る他の子女と違い、彼女も家族を亡くし、親戚が跡目を継いで居場所が無くなってこの院に入ってきたのだ。

「私も、自分に代わってブノワ家を継いだ叔父が、結婚相手を見付けてくれると良いんだけどな……。そうしたら、私も外に出てソニアに会いに行けるのに……」

「パメラ……」
 
 ソニアはうっすらと目頭に涙を浮かべる友人を抱き寄せた。
 パメラの叔父は修道院に入れた姪のことなど忘れているだろう。
 現に手紙を送っても返事が返ってきた試しがない。
 修道院への寄付金は毎年送られてきているらしいが、それも年々先細りしていると聞いた。
 
 ソニアは、パメラのきつく結わかれた漆黒の髪を撫でる。
 他にも、居場所がなくて院に来た子女は沢山いる。
 だがパメラとは気が合い、同室だったこともあって笑い合い泣き合い、寂しさも共有しお互いに励まし合った仲だった。

「手紙を書くわ。それから、パメラの叔父様にもお会いして尋ねてみるつもりよ。『彼女は年頃ですよ。良いお相手をお探しにならないのですか?』って」

「セヴラン王子のお相手から言われたら、叔父はきっと慌てふためいて急いで探しそう」
 
 想像したのか、笑顔を見せたパメラを見て安心したソニアは彼女の手を握る。 
 向かい合い、二人両手を合わせ指を絡めた。そして額を合わせる。 
 お互いを励まし合う時に、いつもやっていた動作だ。

「改めておめでとう、ソニア。いつも貴女の幸せを祈っているわ」
「ありがとう、パメラ……。私も貴女の幸せをいつも祈っているわ……」
 
 二人、長い間そうしていた。



 瞳に浮かぶ涙を隠すように瞼を閉じて……。
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