誰にも言えない秘密の結婚
「吉田が出て来るまで待っててやるからさ、行って来いよ」
後藤さんがニヤニヤしながらそう言ってきた。
嫌だ……。
絶対に嫌だ。
「早くしなよ」
西山さんに身体を軽く押される。
よろけて倒れそうになるけど、なんとか持ち堪えた。
涙が出そうになる。
それはカラシのせいじゃない。
「…………ゴメン、なさい」
「はっ?聞こえねぇ」
「ゴメンなさい!無理です!」
私は大きな声を出して、頭を下げた。
頭上に聞こえてくる舌打ち。
「空気読めよ」
「あーあ、吉田のせいでしらけちゃった」
「ただの罰ゲームなのに」
「飲み直しに行こうぜ」
「だね」
何で私が……。
社会人になってまでこんなこと……。
もう嫌だ。
私以外の4人がゾロゾロと歩き出すのが見えた。
頭をゆっくり上げる。
歩いている4人の背中をただ、見つめることしか出来なくて、零れ落ちそうになる涙をグッと堪えた。