誰にも言えない秘密の結婚




「吉田が出て来るまで待っててやるからさ、行って来いよ」



後藤さんがニヤニヤしながらそう言ってきた。


嫌だ……。


絶対に嫌だ。



「早くしなよ」



西山さんに身体を軽く押される。


よろけて倒れそうになるけど、なんとか持ち堪えた。


涙が出そうになる。


それはカラシのせいじゃない。



「…………ゴメン、なさい」


「はっ?聞こえねぇ」


「ゴメンなさい!無理です!」



私は大きな声を出して、頭を下げた。


頭上に聞こえてくる舌打ち。



「空気読めよ」


「あーあ、吉田のせいでしらけちゃった」


「ただの罰ゲームなのに」


「飲み直しに行こうぜ」


「だね」



何で私が……。


社会人になってまでこんなこと……。


もう嫌だ。


私以外の4人がゾロゾロと歩き出すのが見えた。


頭をゆっくり上げる。


歩いている4人の背中をただ、見つめることしか出来なくて、零れ落ちそうになる涙をグッと堪えた。




< 34 / 302 >

この作品をシェア

pagetop