誰にも言えない秘密の結婚
「俺たちの役目は終わったな。なぁ、母さん」
「そうね」
「これからは母さんと2人で旅行に行ったりして楽しもうかな」
「そうね」
そう言いながらお互い笑い合うお父さんとお母さん。
当たり前のように見ていた両親の姿。
今は新婚のように初々しく見える。
それから、ご飯を食べながら新居はどうするのか、結婚式はどうするのか話し合った。
新居は藤原さんのマンションに住むことになった。
私が住むアパートより広いからという理由で。
結婚式は挙げる予定はないことを告げると、お父さんもお母さんも少し悲しそうだった。
藤原さんは私に結婚という逃げ道を作ってくれただけ。
だから藤原さんの本当の気持ちはわからない。
私の一方通行な気持ちだけで結婚式は挙げられない。
それに結婚式や披露宴に呼ぶ友達もいないし。
でも、本当の理由を話すことが出来なかった。
今すぐではなく、落ち着いたら結婚式をすると藤原さんが言ってくれて両親も納得してくれた。
嘘でも、そう言ってくれたことが嬉しかった。