キミの音を聴きたくて
「……陽葵?」
幻聴かと思った。
まさか、まだここにいたなんて。
予想していなかったわけじゃないけれど、まさか本当にいるとは。
「天音、先輩……」
今は放課後なのに。
帰っていてもおかしくはないのに。
どうしてここにいるんだろう。
……会いたくなんてなかったのに。
「お前、どうしてここに来た?」
怪訝そうに見つめるその瞳には、光は宿っていない。
そんなの当然だ。
彼にとって私は敵なんだから。
そして唯一、自分の本心を見せられる存在でもある。
そう言えば聞こえはいいけれど、実際はそんなに近い関係ではない。