夏のプールと男の子【完】
お、ま、え、ら…。可愛すぎか!!!
叫ぶ。叫んじゃうよコレ。皆何その顔、可愛すぎない??悶えるよ、男子が見たら卒倒もんよ?
やっぱり私だけ誘われなくて悔しい、と思う気持ちもあるけど、皆嬉しそうだし、皆が楽しいなら私も嬉しいからいっか、となってしまう。
「もう、しょうがないなぁ〜」
砕けた感じの返事。皆の顔がふっと緩んだ。
「楽しんでくるんだよ?」
私の問いかけに皆は子どもみたいに首を大きく振った。くすりと笑みがこぼれる。その行動だけで、皆が私の事をどうでもいい訳じゃない、って言ってくれてるのが分かるから。
いってらっしゃい、と私が声をかけると、皆は私に手を合わせてから、それぞれの男の子の方に戻って行った。
「…さて、私どうしようかな」
体の後ろで手を握って踵を返した時。
「ひゃっ」
「あ、ごめん。ビックリさせた?」
私の真後ろには結城くん。
「いや、いやいや…大丈夫ですよ」
驚きか、イケメンさんが目の前にいたからか分からないドキドキが私を襲う。そのせいで笑みが少し引きつった。
そうか…。突然お見合い状態になってたから気が回らなかったけど、結城くんは誰も誘ってなかった。じゃあ、余り物同士…?
その先を考えて胸が高鳴った。
え、やばい。なんか急に緊張してきたかも!そうだ、まずは会話、会話から…。
「俺、自分の荷物置きの方戻るよ。あいつら、多分閉園まで戻って来ないと思うし。
紺野さんも、女の子が一人で遊ぶのは危ないから、荷物置きの方戻った方が良いよ」
ガッカリ。名前を呼ばれて、嬉しい。女の子扱いされて、嬉しい。そしてまた、ガッカリ。彼の言葉で私の気持ちは浮き沈みした。
私が一人で遊ぶのは危ないって言うなら、一緒に行動してよ。
そう思った自分に心底驚いた。まさか、初対面の人にそんなワガママを抱くなんて思ってもいなかったから。
「紺野さん?」
返事をしなかった私を変に思ったのか、結城くんが私の顔色を伺った。
「あっ、いえ、何でもないです。
お気遣いありがとうございます」
私はそう言って彼に会釈した後、自分の荷物置き場へと戻って行った。