夏のプールと男の子【完】


「ねぇ、君達俺らと一緒に遊ばない?」


わ、今度はちょっとやばそうな人だな。


話し掛けてきた三人組の男性の雰囲気を見て思った。


あれから遊び始めて約一時間。


こんなふうに声を掛けられたのは三回目。ホントに皆凄いとしか言いようが無い。


「いや、大丈夫です」


優香も三回目となれば慣れたもので、華麗に誘いをかわす。


大体はこれで引き下がってくれていたけど、今回はそうはいかなかった。


「そんな事言わないでさぁ」


あろう事か、優香の手首を掴んで引っ張り出したのだ。


「ちょっと…!やめてください」


嫌な予感的中。


優香は掴まれた手を振りほどこうとするが、男の力には敵わない。


安澄と凛華はまさかの展開に頭が追いついていないようで、唖然としていた。


「しつこい男は嫌われますよ」


私は優香と男の間に割って入り、手を引き剥がした。


「はぁ?」


急に引き剥がされた事により、男はあからさまに不機嫌になった。私を鋭く睨みつける。


怖い怖い怖い!


間に割って入っただけでも勇気を振り絞ったのに、睨みつけられると心は今にも泣き出しそうだ。


しかし、ここで萎縮してしまえばこいつらに舐めてかかられる。私は最後の一押しをする事にした。


「今までの方は直ぐに引き下がってくれましたよ。

こんなにしつこいと、ここまでしないと女の子と喋れない可哀想な男、っていう認識になりますが。

ね?皆」


皆はただ呆然とした状態で、私に促されるまま頷く。


その様子を見た男の顔が歪む。さすがにこんなに可愛い子達にそう思われるのは男のプライドが許さないのだろう。


早くどっか行って!立ってるのも限界なの!


震え出す足を気持ちで必死に踏ん張る。私と男は火花を散らしながら見つめあった。すると、先に目をそらしたのは男の方だった。


ようやく解放される。ホッと気を緩めたとき、


「ちっ、ブスが。場違いなんだよ」


男は最後の抵抗か、私に小さな声で罵詈雑言を浴びせてどこかへ行った。

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