偽りのフィアンセ

偽りの……【出会い】




──二週間だ。

高校に入ってからの約二年半、今までしてきた数えきれない程のアルバイトの最高出勤日数は、たったの二週間。

いつも同じような理由で辞めていた。そして今回もまた……。

──ガシャンッ!!

「いい加減にしろよ、オッサン」

数秒前、イヤらしくあたしの腰を撫で廻した『店長』の肩書きを持つ男は、床に落ちて割れた皿のすぐそばで尻餅をついたまま呆然とこちらを見上げている。

今日はとても機嫌が悪かった。元々気が長い方ではないし、お淑やかとは程遠い性格だが、多少なりとも忍耐力は持ち合わせている……つもりだ。

だが、男の汚ならしい手が、あたしの腰を這ったと同時に、朝から溜まっていた苛々が一気に爆発したのは言うまでもなく、気がついた時には持っていた洗いかけの皿を床に叩きつけて、小太りの醜い男の腹に思いきり蹴りを入れて悪態をついていた。


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