エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 スーパーの駐車場に停まっていたのは、まさに『こーみんテレビ』の車で、スタッフも三名乗って待機している。

 ちょうど谷川が車の外で一服してたので、すぐに望に気が付いて、

「こっち!こっち!」

と手招きした。

「ちょっとビックリしたよ!結局、本物呼んじゃったんだ。スゴいね。」

 望が言うと、

「おーっ!騙された。騙された。バッチリだね。後はみんなの演技力に賭けるだけだね。」

 谷川が至極ご満悦になって言った。

「えーっ!やっぱり劇団員の人なの?でも車はテレビ局のを借りた?」

「いいや〜会社の同僚の車だよ。知り合いに看板屋がいたおかげで、大急ぎでカッティングシートで作ってもらったよ。」

「知らなかった。アナタがこんなに凝り性だったとは。新発見ね!」

「もしかして、世界で一番イイ男とか思ってる?」

「ううん」

「えっ!」

「じゃなくて宇宙一イイ男に決まってるじゃん!」

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