エア・フリー 〜存在しない私達〜《前編・誕生》
 病院の様子は、弥生の不安とは異なっていた。

 中条の部下らしき姿はなく、見舞い客も訪れていないようだ。

 美佐子たちがいることが一番心配だったので、敢えて弘輔の参観日である今日まで待っていたのだ。

 美佐子は重病の夫より、可愛い愛息子の事が大切だという確信があった。

 そして病室の前に辿り着くと、躊躇したが一呼吸してドアをノックした。
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