恋愛上手な   彼の誤算
決意と打算の契約
「西本さんこれ先週の領収書。よろしく」
「分かりました」

入社して三年。そこまで忙しくも暇でもない総務部は女性陣からなかなか人気の部署らしい。
他部署の男性陣が雑用でよく顔を出し、それ故コンパの繋がりやお誘いがそこそこある。そして恋愛に発展してからも残業の心配がほぼない。

曰く、「恋愛がしやすい」とのことで。

そんなある意味「恵まれた」部署にいながらも今年で二十六歳になる私は今まで一度も彼氏が出来たことがない。

女子高育ちで身近な男子と言えば滅多に会わない親戚と八歳上の兄代わりみたいな隣人しかおらず、その免疫の無さ故に男性と接するのが苦手になっていた。

「わ、山本さんそのネックレスもしかして!?」
「昨日誕生日だったの。プレゼントに貰っちゃった」
「素敵~」
「でも佐々木ちゃんも先月彼氏と旅行行ってたじゃん」

背後で唐突に始まった幸せオーラ全開の会話がいやでも耳に入ってくる。
勤務中なんだから、と思う前に心からうらやましいと思ってしまう自分が悲しい。接するのが苦手でも決して恋人が欲しくないわけではないのだ。

「はぁ」

溜息をついてパソコンに向かおうとした矢先、目の前の視界を邪魔するように白い紙が降りてくる。

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