プラス1℃の恋人
 ここ最近は気温だけではなく湿度も高く、最悪の状況だった。
 そのうえ節電対策とやらで、去年よりもオフィスのエアコンの設定温度が高くなっている。

 6月から10月にかけて全国的に行われる〝クールビズ〟。

 温暖化対策の一環なのだが、経費削減にもつながるため、青羽の務める会社でも積極的に取り組んでいた。

 それまで暑苦しいジャケットを着てネクタイを締めていた男性社員は、嬉々としてみな半袖シャツにIDカードをぶら下げただけのスタイルになった。
 外部と接する機会の少ない内勤の社員は、ノーネクタイだろうがポロシャツだろうがTシャツにビーサンだろうが、会社的にはさほど問題はないらしい。

 一方、女性のビジネスファッションは、自由度はあるが、制約もある。
 過度な露出は控え、素足もNG。
 汗で化粧が崩れやすいのに、ノーメイクもダメときた。

 ――なにがクールビズだ。男ばっかりネクタイをはずし、楽な格好をしやがって。

 そんな愚痴が出てくるのは、入社した年、クールビズが始まった日にキャミソールを着て、上司にしこたま怒られたからにほかならない。

 とにかく青羽にとって、夏は一年でいちばん憂鬱な季節だった。
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