*好きと言えない俺様王子*
――けれど。

 放課後、黒瀬君は教室にいなかった。

 私が用具室へ掃除道具を取りに行っている間に帰ったらしい。

 教室の中は誰もいない。

「はぁ……黒瀬君、帰っちゃったのか。用事あったのかな」

 私はがっかりしながら、バケツに雑巾を入れて絞った。

 
 暫くすると、外から騒がしい声。

「なんだろ」

 そう思って窓の外を眺めていると

「黒瀬君、一緒に帰ろ!」

「ねー黒瀬君」

 女の子たちが正門の前で黒瀬君に群がっているのが見えた。

 どの女の子もバッチリお化粧して、可愛くて……

 私とは大違いで……



「黒瀬君……」

 私は遠巻きから眺めていることしかできなかった。

 私は……あの女の子たちの中に入れる気がしない。

 だってあんな可愛くお化粧とかできないし。

 いいんだ……私はこうやって、黒瀬君の分まで雑巾絞ってれば……


――ガラッ

 ドアが開いたかと思うと、先生が入ってきた。

「おい、黒瀬はどうした?日直だろ」

「えっと……い、いません」

「なんだと?早く連れ戻せ。そんで終わったら2人で職員室に報告に来い。それからそこのノートも運んでこい」

 先生は言うだけ言うと、出て行ってしまった。

「つ、連れ戻す~!?」

 私は無理難題を言い渡されたけれど、仕方なく正門に向かった。
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