気付いた時には2人の君が・・・
ひとり
この頃憐可の姿を見てないな。そう思っていた頃だった。いきなり、あんなことを告げられるなんて。
いつもの公園。何も変わり映えのない普通の公園。夕焼けの時刻に待ち合わせを受けた僕はベンチに座って待つ。オレンジ色の景色と遊具から伸びた影が相まう。なんとなくよくないことが起きるんじゃないかという思いが僕の中にはあった。
薄暗い影がこちらに向かってきた。やがて近づいてきて可憐だとわかる。
「可憐だよね、」
ただ歩いてきただけではどっちか確認できながったので一応聞いてみる
「はい、」
「んで、話したいことってのは?」
「入れ替わりのことなんですけど…」
「どうしたの?」
「二重人格じゃなくなったみたいなんです」
「え……本当に?」
「はい、なんて言えばいいかわからないんですけど。なおったことはわかるんです。きっともう入れ替わらないんだろうなって。」
「そう、なんだ、」
ってことは、もう憐可はいないのか…。なんか少し寂しい気もするかな。もっと話したかったし、いろんなことを聞いてみたかった。
「…久しぶり」
そこにいたのは可憐じゃなくて憐可だった。いつもとは違う様子で、なんの前触れもなく登場した。
「なんで、ここに?」
「わからない、でもこれが最後みたい。もう体に感覚がなくてね、宙に浮いているみたいだよ。」
疲れ切った表情を無理やり引きつらせて笑っていた。彼女の言う通りこれが最後なんだ。もう、これが最後。
「もっと話したかったし、一緒にいたかったよ。もしかしたら、二重人格でもいいんじゃないかって思ったこともあったし。今でもまだ消えて欲しくない。……………でも最後に会えてよかった。」
「もう、やめてよね。そんなこと言われたら悲しくなるじゃん。私だってずっといれたらいいなって、このままがいいなって…………
ごめんごめん。最後はしおらしくしないで笑って終わるべきだよね。こんな短い間だったけどありがとう。可憐をよろしくね。」
目を細め、顔を赤くしたまま精一杯笑う憐可。僕はその一瞬をいつまでも忘れることはなかった。
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