君と3日だけ、恋をした…。
2時間後、はるちゃんのお母さんは空に消えた。

はるちゃんはまだ幼いから、この現状を分かっていない。

泣いているのははるちゃんのお父さんと、はるちゃんのお母さんの親戚。

あたしと看護師さんは遠くから見ているだけ。


「さっきの子じゃん」

「…あ、嘘つき」

「嘘つきって?」

「走らないって言ったのに走ってたでしょ」

「…あー。ごめん……。さっきの女の子?」

「そう。お母さん、死んじゃったんだ」

「…まだ小さいのに可哀想」


可哀想なのか。

あたしには感情がないらしい。

1度言われたことがある。

これを見ても、可哀想だと思えない。


「…名前、なんて言うの?」

「あたし?」

「そう」

「…高梨 笑子(たかなし にこ)」

「笑子か。俺は山岸 陽太(やまぎし ようた)。ついでに、16歳。高校1年」

「あたしも16歳」

「同い年かよ」

「なにか文句でも?」

「別に」


なにその言い方。

妙にムカつくやつ。

…はぁ、眠くなってきた。

部屋に戻ろう。


「どこ行くの?」

「え?いや別に、病室だけど」

「入院してんの?」

「そうだよ」

「…へー、じゃぁまたここに来たら会える?」

「なんで?」

「好きになった。一目惚れ」

「…え」


何言ってんのこいつ。

あたしのこと好き?

一目惚れ?

ふざけんな。

あたしは恋愛なんてできない。

だってあたしは……。


「もうすぐ死ぬの。だから恋なんてしたくない」

「…死ぬ?そんなに重い病気なの?」

「そうだよ。昔から心臓が悪いの。だからごめんね?」

「…俺、諦めねぇから!あ、やべタイムセール始まる!!じゃぁまたな、笑子」

「は?」


そして、陽太はまた走って病院から出ていった。

やっぱ嘘つきだ。

あ、看護師さんに止められてる。

ぷはっ。

面白すぎ、タイムセールって単語聞こえてくるし。

主婦かよ。
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