青野君の犬になりたい
結局3人で展望台に上り、紗子さんは青野君の腕を放さなかった。
東京の景色をのんびり青野君と楽しむはずだったのになんだかなあと思いながら、ひとりで大きな窓に沿って歩きながら、青い外の下に広がる風景を眺めた。
ふと気づくと青野君たちの姿が見当たらない。
周りでワイワイと賑わっている家族連れやカップルの人混みの中から青野君の姿を探すが、見つかったのはこちらに向かってくる紗子さんだけだった。
彼女は真っ直ぐ私に向かってきて、彼はトイレとだけ言うと私の隣に並び、私にではなく外に目をやりながら決意表明のように宣言した。
「私、譲らないから。青野君もおかみのポジションも」
青野君はわかるけど、おかみってなんですか。
思わず「オカミ?」と反復したところで、バッグのポケットでスマホが振動する。
外を眺めつづける紗子さんに背を向けて、そっとメールを開く。
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