西城家の花
流水の少女は大熊に焦がれる






「今日は、我が西城に足をお運びいただき、誠に感謝します。これからも流水家とはご縁を結ばせていただく…」





「嫌ですわ、聖様。お顔をお上げくださいな。そんな他人行儀はおよしになってください。わたしたち家族になるんですから」





その言葉で聖ががばっと顔を上げると、今にも泣きだしそうな彼女の手を悦子がぎゅっと握った





「そんなに心配しないでくださいませ。うちの美桜はなんというか、ほら、箱入り娘で、知らないことが多すぎて少し戸惑ってしまっただけですわ」





「いえ、いえ…。美桜様は決して悪くありません。全ては大志の…、いえあんな風にあの子を育ててしまったわたしたちの責任です」





そう言って、車の後部座席で父親に膝枕をされている美桜の姿を目にし、聖はますます申し訳なくなってきた




事の発端は食事会が終わり、そろそろお開きかと思われた見合いが流水の現当主、つまりは美桜の父の提案によって延長されたのである





『大志くんが、稽古をしている姿が見てみたいのですが、よろしいでしょうか?』





突然投下されたその言葉に西城一家がひくついたその一瞬の間に大志は二つ返事でそれを承諾してしまった




まだ齢が16しかない少女に大志の体はあまりにも衝撃的すぎると大慌てでそれを阻止しようとしたが、既にやる気満々の大志と興味津々の流水の当主を止めることも出来ずに大志の稽古お披露目会が幕を開けてしまった





さすがの大志も客人の前で、いつものように上半身裸で稽古を始めることもなく、道着で現れた時は安堵したが、だがそれでもやはり道着の着付けの間から見える彼の筋肉は美桜には刺激が強すぎたようで、両手で顔を覆い、チラチラと大志の体を物珍しそうに見ていた





これはやばい、かなりやばいぞと危機感を感じていたが、流水の当主が思った以上に興味を示してしまい、止めたくても止められない





そしてその想像していた最悪な出来事が、大志の稽古の真っ最中に起きてしまったのである





美桜の異変にいち早く気づいたのは聖だった





夫や満よりも大志の行動に腹を立てていなかった彼女はいつものように汗を流しながら体を動かす息子の姿を眺め、不意に美桜に視線を移すと、何やら様子がおかしい





胸を押さえ、肩を上下に揺らし、真っ赤な顔で大志を見つめる姿は明らかに普通ではなかった






< 15 / 115 >

この作品をシェア

pagetop