西城家の花






どうやら人だかりは校門のほうへと集まっているらしいのだが、何やら様子が変だと大志は思った





そこに集まっている殆どの人間が、何かから一定の距離を保っていて、そこから動こうとしない





しかもその場にいる全員の視線が同じところを向いている





騒ぎを聞きつけて先に駆けつけていた敦司でさえ口を半開きにさせ、何かに釘付けになっている





いったい何があったんだと、さすがに気になった大志が皆の視線の先を辿ると、そこには見覚えのある人物が校門の前に立っていた





長い髪を風になびかせ、有名女子高の制服に身に包む可憐な少女、流水美桜がそこにいたのだ





暫く思考が止まり、呆然としたまま彼女を見ていると、大志の存在に気付いたのか満面の笑みで近づいてきた






「大志様!!」






この世ならざるほど絶世の美少女が、校内でも『大熊』と呼ばれている大志に笑顔で駆け寄る姿を見て、少女のことを遠巻きで見ていたものたちの口が半開きからさらに大きく開かれた






「…美桜殿…」





不意に大志がそう呼ぶと、笑顔だった美桜の顔が急に真っ赤になり、顔を俯かせてしまった





昨日の今日で何故彼女がこんなところにいるのだろうと回らない頭を必死に回転させていると、後ろから制服を引っ張られたので振り向くと、敦司が瞳をキラキラさせて大志を見上げていた






「大志、お前、その美少女とはいったいどういう関係なんだ?」






敦司がそう尋ねると、その場にいた全員が同じ気持ちだったのか、その答えを聞こうと一斉に視線が大志へと向けられる





なんか昨日もこんなことがあったなと、またまた針の筵にされている気分になりながら大志はこの場をうまく誤魔化す方法を探っていた






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