時渡りと桜











目を開けると、視界に見慣れた天井が広がった。

いつの間にか眠っていたみたいだ。

左手はスマホを握っている。

スマホを操作し、桐生とのトーク画面を開く。



『来週の木曜だけど。急にどうした?』



四日前に来た、桐生からの返信だ。

桐生と話したかったはずなのに、なんて返せばいいのか分からなくて、既読無視の状態のまま、気づけば四日も経っていた。




日に日に記憶が薄れている自覚はある。

それでもなんとか、タイムリープしたことを思い出して、あれからずっと理由を考え続けた。





なのに――。



ため息を吐いて、もう一度目を閉じた。

明日、桐生は引っ越すらしい。

スマホで話せないなら、直接会って、無理矢理にでも桐生と話す状況をつくった方がいいと思った。

桐生の家は知っている。

何度も会いに行こうと思うけど、家を出ようと玄関のドアノブを握る度、そこから動けなくなってしまうのだ。




――私が急に会いに来たら、桐生は戸惑うだろうな。


そもそも会いに行って、何を話したい?




桐生に、何を伝えたい……?






私は、こんなに臆病な人間だったのかと、自己嫌悪に陥った。

なんで、自分のことなのに分からないんだろう。

タイムリープした原因は、自分にあるって分かってるのに。

もどかしい。

こんなことをしてる間にチャンスは今日と明日だけになってしまった。

いや、もう日が暮れたから今日はない。




チャンスは、明日だけ。











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