スイーツ王子と恋するレシピ
「つ、次だ! 次は何だ!」
 恵斗さんの表情には焦りの色が。

 焦っちゃダメ。恵斗さん。次は必ず勝つに決まってるんだから。いつも通り、頑張って。

「よし、じゃあ2回戦はタルトだ」

 次は絶対に負けない!


 恵斗さんとわたしが作ったのは、苺やブルーベリー、桃やパパイヤ。色とりどりのフルーツを使った見た目も鮮やかなフルーツタルト。
 対するシカオのタルトはブラックベリーだけのまたもや真っ黒のタルトだ。

 1回戦を同じく、偶然やってきた客がどちらかを選ぶ。
 2回戦の審査員となった客は、20代前半の、派手な巻き毛のギャルだった。

「えー、うそー、2つとも食べていいわけ? ヤバーい」
 そう言いながらギャルは2つのタルトを平らげた。

「んーと、アタシ的にはー。カンペキこっちでキマリ! みたいなー!」

 ギャルの派手な装飾を施した爪の先には…

 シカオのブラックタルト!?

 また負けた!?


「どうだ? まだ勝負を続けるか?」
 シカオはクスッと笑い言った。
「どっちにしろ、オレの勝ちだ」

 恵斗さんは何も言えず下を向いてしまった。

 まさか、そんな。恵斗さんが負けるなんて、ありえない。

 沈黙が続いた。

「恵斗さん…」
 わたしは慰めようとした。こんなことで自信を失ってほしくない。

「ココ…。潔く負けを認めよう…」

 でも、でも…。

 わたしは考えた。

 今日一日の出来事を。

 何か、あるはず。何か、突破口が。

 

 

 
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