スイーツ王子と恋するレシピ
第3部・王子と甘いスイーツ旅へ!
 いま、わたしは飛行機の中

 雲の上を飛んでいる

 窓から見える雲は巨大な綿菓子みたい

 空も、ただただ青くて、美しい

 そして、となりには大好きなわたしの恋人、天才パティシエの恵斗さんがいる

 いまから二人のはじめての旅行

 行き先はパリ!

 
 スイーツの本場パリの甘いスイーツを堪能しながら

 二人の愛を深めるの



 ああ、きっと甘い甘い、あま~い旅をとなるでしょう!



 と、思ってたのに…。



「ココ、喉かわかないか」

「……」

「ジュースもらおうかな。ココも、いる?」

「……」

「なあ、ココ。まだ怒ってるのかよ、いいかげんに機嫌なおせよ」

「…いりません!」

「……」
 
 わたしはずっと顔を窓にむけたまま。恵斗さんは席を立ち、CAさんへ直接ジュースをもらいに行ったようだ。

 数時間前、わたしたちはケンカをしてしまった。

 あーあ、せっかくの旅行なのに。


 ケンカの原因は、パリでの観光コースのこと。

「シャンゼリゼ通りを歩きたいし、ルーブル美術館にもヴェルサイユ宮殿にももちろん行きたいし、セーヌ川クルーズもしたい!」
 と、わたしは「はじめてのパリ」というガイドブックを手にしてはしゃいでいると、恵斗さんはお得意の毒舌で
「バッカじゃねーの! おのぼりさんかっての!」
 と、一蹴。そして
「遊びに行くんじゃねーんだぞ!」
 と、冷たい一言。

 わかってる。この旅行は、今後のシャルロットのスイーツのための研究旅行なのだ。本当は恵斗さんとオーナーが二人で行く予定だったのだが、オーナーには他に大事な用ができて、
「社員旅行も兼ねてココちゃんが行っておいで」と言ってくれたのだった。

 でも、でも、恵斗さんは何度もパリに訪れているんだろうけど、わたしははじめて。海外旅行自体が初なのだ。それにそれに、せっかく恋人同士になれたのに、店が忙しくてデートもしたことがなくて…。

 わたしは我慢しようとしたけれど、ぶわあっと涙が溢れてしまった。

 さすがの恵斗さんも焦ったらしく、
「ご、ごめん。言い過ぎた」と、謝ってくれて
「メインはパティスリー巡りだけど、時間があったらな。ココの好きなところ連れてってやるよ」
 と、わたしの涙を優しく拭ってくれた。

 いつもならそこで機嫌を直して仲直り。なんだけど、わたしはもう少しだけ、懲らしめてやりたいという気持ちがわいてきた。
 意地悪かな。でも、ちょっとだけ。
 パリに着いたら許してあげるから、ちょっとだけ困らせてやろう。

 わたしは毛布で顔を隠してムフフと笑った。


 でも

 まさか

 あんなことになるなんて…!!

 
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