貴方が手をつないでくれるなら

…緊張するなぁ。送ったら間違いなく届いてしまうからな。

【メール有難うございました。私としてはお会いして直接謝らないと気が済みません。そちらが許してくれても今のままでは謝罪が済んだ事にはなりません。柏木悠志】

堅いかな…。不躾かな…。でも、こんなもんだろ、これが普通だろ。電話では無く、メールだというところが、少し逃げている気もするが…。仕方ない。伝える事が先決だ。

…よし。送るぞ。

あー、…送ってしまった。

…。

どうやら拒否はされてないみたいだな。取り敢えず、届いたという事か。
公務員でありながら、不規則に近いと言えば近い、そんな職業だ。俺が空いた都合で、相手が都合がつくとは限らないし。メールにあった事が本当なら、多分仕事、忙しそうだしな。仕事…何してるんだろう。

ブー、ブー、…。おﾞ。……返信、…来た。

【お昼ご飯を食べにまたベンチに来る事はありますか？私は、また行き始めましたから、そちらの都合で来てみてくれますか？そしたら無理無く会えますよね】

ああ、まただ。名前は入って無いんだな。会えた時に教えてくれる気があったら教えてくれるか。
しかし、よく見てるもんだ。大祐の奴、名前が入って無いとか、細かいところによく気がついたな。認めたくは無いけど、流石と言えば流石刑事だな。

【毎日ではないですよね？やはり水曜日に居るのですか？】

…あ、そうよね。時間が出来て、闇雲に来ても、私が居ない日ならずっと会わないものね。

【水曜日はこちらの都合で行かない事になったんです。今は決まって無くて。でもこれからは金曜日に居る事にします。時間はおおよそですが１３時から１４時の間です】

【解りました。丁寧に有難うございました。会って欲しいと言いながらも、こちらもいつ行けるか解りません。申し訳ないです】

【特殊な仕事と言えば特殊な仕事ですよね。仕方ないと思います。待っていないつもりで居ますから気にしないでください。気をつけてください】

ああ、何だか、気がつけば、結構なやり取りをしている。アドレスが解ればなぁ。もっと気にせず送れるのに。…こっちのアドレスだけでも知らせて見るか。

【お気遣い有難うございます。私のアドレスです。×××××＠××××××××.ｎｅ.ｊｐ】

これは勝手な押し付けになるのだろうか。

ん？

【これが私のアドレスです】

…、お、…来た。教えてくれた。これは…奇跡の大逆転に値するぞ。