俺のバンドのボーカルは耳が聞こえません



無表情の彼女の目は真っ直ぐ俺を捉えているが、俺と違って、その目は生きていた。

俺とは別世界の住人なんだろうと思うと、何故だか苛ついた。
彼女にか?俺自身にか?
まあ、そんなことはどうでもいい。


俺は公園から出るつもりのため、彼女に近付いて行く。

どうしてそんなに俺を見つめているのか分からないが、この時間帯にこんな所にいるようじゃ、俺と同じで不登校なのだろう。

彼女の前まで来たはいいが、小さい公園の狭い入り口だと、ここで立ち止まられたら出ように出られない。


「……退けよ」

そう声を掛けるが、彼女は何も反応を返さない。


「おい、退けって」
「………」
「何なんだよ、退けって言ってるだろ」

俺は彼女の肩を掴んだ。

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