修羅場の色
「紅茶でいいかしら?」


「おかまいなく……」


「ちょうど、美味しいクッキー頂いたのよ」
 
 彼女が紅茶とクッキをトレーに乗せ、テーブルの上に置いてくれた。

 そして、彼女は特に構えた様子もなく、私と向かい合うように座った。

 

 私はこの穏やかな空気に負けてはいけないと、すぐに話を切り出した。


「あの…… 奥様…… 私も副社長は頂けないんですけど……」


「ええっ、どうして? 愛人さんなら嬉しいお話じゃないの?」


「本当に軽はずみな行動をしてしまい、申し訳ありませんでした。でも、いらないんですけど……」



「いいのよ。軽はずみで…… だって、真剣に考えたらあの人選んだりしないでしょ? きっと、気が付いたらベッドの上で裸にさせられていったて所じゃない?」


「ま、まあそんな所なんですけど…… すみません……」

 いやいや、こんな事を奥様の前で認めてしまっていいものなのか?

 なんだか、おかしな事になってる気がする……



「いいのよ…… 謝らなくても……  私だってそうだったんだから…… もう、やめようと思ったら妊娠していてね…… でも、子供の事は後悔はしてないわ……  だけど、もういらないの…… 」


「私も、困るんです」

 私は必至で訴えた……



「そんなぁ。責任とってもらって下さい」


「いえいえ、奥様こそ責任とって引き取って下さい」



「もう、うんざりなの…… 私は八年も耐えてきたんだから…… 美優さんまだ、始まったばかりなんだからいいじゃない……」


「いえ、もう結構です」


 私が頭を下げた時だった。


 玄関の扉が開き、副社長が入ってきた


 私を見て、表情が硬くなった。



 当然だろう…… 


 修羅場なのだから……
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