修羅場の色
 私は何故か副社長より、彼女から目が離せなかった。


 誰にでも向ける笑顔は、信頼されている相手への偽りの無い物だと感じた。

 彼女の周りには多くの人が集まる。皆、心をゆるし笑いあっているように思えた。


 私はこの人には勝てない、凄すぎる。


 奮発して買ったワンピースが色あせて見えてきた。



 すると、彼女が私の方に目を向けた。


 彼女をずっと見ていた私の目と合ってしまった。


 私は背筋が凍りつき動けない。


 彼女はそのまま、華麗に表情一つ変えず、ワイングラス片手に近づいて来た。


 お願い来ないで……

 ワインならカウンターへ行って……


 私は心の中で強く願ったが、彼女は私の前に立った。


 怖い……


 何を言われても、私は謝るしかない……


「あなたが、飯山美優さんね?」

 もう、名前まで知られている。


「あ、はい」


「ちょっといいかしら?」


 完璧に副社長との事が知られていると悟った。
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