名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
「みい。寒くない?」


風が何度か過ぎるのをやり過ごしていると、そうちゃんが小さく呟く。


「寒くないよ」


大丈夫、ありがと、と言ったのに、そうちゃんはなんだか不満そうで、首を傾げる。


「何?」


そうちゃんはこちらを見て、前を見て。


「……そこは寒いって言うところ」


むすりと、唇をとがらせた。


……この、ひとは。もう。


急に上がり始めた体温をごまかすべく、流してみる。


「えええ? そう?」

「そうなの」


流してみたのに。


「あと俺は寒い」


そんなことを、少し照れた声音で言うから。


わたしが耐えられなくて、困る。


「……そ、ですか」

「……そうなんです」


そうちゃんがわたしの手をさらった。


そうちゃんの制服のポケットに、そのまま入れられる。


「わ、そうちゃんの手冷たいんだけど」

「ん。寒いの。だからあっためて」

「やだ」

「けち」

「けちじゃない!」


本当に寒いんだなっていうのは分かった。分かったけど。


冷たいそうちゃんの手に、わたしの体温がどんどん奪われていく……!
< 17 / 62 >

この作品をシェア

pagetop