名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
「今日の晩ご飯、何だろうねえ」


放課後、帰り道をのんびり歩きながら、何となく言ってみたら。


「多分レバニラ。朝そう言ってた気がする」


隣を歩くそうちゃんが、さらっとそんなことを言うから。


「あれ、そうちゃんレバー食べられるの?」


すごくびっくりして、思わず横を振り仰いでしまった。


そうちゃんは何でもないことのように前を見ている。


「あれ、レバー苦手じゃなかった?」

「うん。まあ」

「前は食べられなかったよね……?」


苦くて嫌いって言ってたと思うんだけど、もしかしてわたしの思い違いかな。


あれ……!?


若干慌てていると、そうちゃんが緩く首を横に振った。


「前はね。今は食べられる」


ふふん、とちょっと嬉しそうに胸を張るそうちゃんに笑いながら、ほんの少しだけ寂しくなって視線を逸らす。


……わたしは、そうちゃんの幼なじみで。かつて、ただの一緒に帰る人だった。


こういうとき、放課後しか一緒にいられなかった頃を思い出す。


あのときの隔たりは、あまりないように見えて、どうしてもどこかに溝があるのだ。

そうちゃんについて知らないことが、どうしても、あるのだ。


悲しいとは思わなかった。


ほんの少しの切なさと懐かしさとが、じわり、胸を締めつける。


「そうなんだ」

「そうなんだよ」

「……そうなんだあ……」
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