名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
年齢が上がるにつれて身長が伸びるのはおおよそ当たり前のことだけど、そんなささいなことでいいんだ。


前髪を切ったとか伸ばしたとか、ポニーテールに結ぶのがうまくなったとか、アイスで頭痛くならなくなったとか、そんなことでいいんだ。


簡単で単純で、変わるのも変わらないのも当たり前な、慣れや時間の経過が絡むこと。


それなら、お互いにたくさんたくさん、あの頃から変わったことがあって。

お互いにたくさんたくさん、あの頃と変わらないことがある。


これからも、お互いにたくさんたくさん、変わることと、変わらないことがあるだろう。


……そっか。そっかあ。


「ねえ、そうちゃん」

「ん?」

「そうちゃんはね、かっこよくなったよ」


そうちゃんは身長が伸びて、声が低くなった。

靴は相変わらずぼろぼろで、鞄は色あせている。

でも、大きい手の温もりと優しさは、ずっと変わらないままだ。


「……ありがとう?」


うん、と笑う。


これからも、そういうささいなことを見つけたい。


変わらない懐かしさを、変わる新鮮さを、こういうそうちゃんの優しさを、たくさんたくさん見つけたい。


「明日も一緒に登校して、一緒に帰ろうね」

「ん」


また明日、を言えば、お隣の扉は、今日も後から閉まる音がする。


いつものこと。

ささいなこと。

きっと当分、変わらないこと。


変わらないで欲しいこと。


振り返るほどに懐かしい日常は、こうやって積み重なっていくんだろう。


「ただいまあ」


わたしはいつものように階段を上った。
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