名前で呼べよ。〜幼なじみに恋をして〜【番外編】
「みいちゃん」

「ん?」


なあに、と漫画から顔を上げないままで返事をした。


隣に座るそうちゃんから、はあ、と小さな溜め息が落とされる。


「もう外暗いよ。早く帰りなよ」

「えー! あともうちょっと!」


駄目です、とそうちゃんは呆れた眼差しを寄越した。


それでも漫画を取り上げない辺りが優しい。


「さっきからそう言って全然ちょっとじゃないじゃん」

「だって面白いんだもん」

「分かるけど。また今度読みなよ」

「今いいところなの……!」


後でじゃ駄目だよ、今がいいんだよ、と力説してみたんだけど、そうちゃんはやっぱり呆れている。


そうちゃんが、二人とも好きなシリーズものの最新刊を買ったと言うので。


放課後二人で走って帰ってきて、わたしはそうちゃんから漫画を借りて、そうちゃんの部屋にこもって読んでいた。


そうちゃんは隣でわたしが貸した漫画を読んでいた。


それぞれ黙々と読んでいたんだけど、まだ全然読み進められていないのに、もう外が暗い。


ほんとにほんとにいいところなんだけどなあ。絶対いいところなんだけどなあ。


……まだ帰りたくないなあ。
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