一之瀬さんちの家政婦君

そうだ。二人は平等じゃない。

飛鳥は和真の所有物。

お金で繋がった関係にすぎない。

借金の返済を済ませるか、どちらかがこの世からいなくなるか、もしくは……和真が飛鳥に飽きて捨ててしまうか、このどれかで関係は簡単に終わってしまう。


終わってしまうのだ――…


突然、飛鳥は激しく首を左右に振って、頭を撫でる和真の手を振りほどいた。


まるで、この関係がずっと続けばいいと思っているみたい……!


飛鳥はキッと睨みつけながら、高身長の和真を見上げる。

彼女が分かりやすく困惑している事に和真も気付いていた。

しかし、彼はとくに声を掛けようともしない。

ただ、飛鳥のしかめっ面を見ているだけだ。

「小腹が空いた。なにか作ってくれ」

「えっ……はい。何がいいの?」

「そうだな……」

和真はしばらく考えた後「オムレツ」とリクエストする。

「かしこまりました」

飛鳥は了解して、すぐに調理にとりかかった。

不機嫌だった気持ちをほんのちょっとだけ浮上させて。
< 55 / 151 >

この作品をシェア

pagetop