嘘は取り消せない
そして時間が来た

なんかすごく塾に行きたくない
蛍に会いたくない
頭が痛い
体が怠い
きっと頭を働かせすぎたのだろう


「どうしよう…………………」
九ノ瀬君のことも
蛍のことも
何も解決してないのに
時間だけが過ぎていく

「でも行かないと……」
また家族に迷惑をかけてしまう
迷惑をかけたくない

そして私は重い足取りで塾へ向かった





「ねぇ、集中出来てるの?」
集中できるわけないじゃない
いろんなことで頭がごちゃごちゃしてるのに
「ごめんなさい」
だけど口から出るのは謝罪の言葉で
「はぁ、しっかりしてよ」
分かってる
だけど、どうしても頭が働かない

蛍は私のことをどう思ってるの?

こんなに近くにいるのに聞けない
その事によるもどかしさ
しっかりできない自分への苛立ち

こんなんじゃダメだってわかってるけど

「…………ッ」

急に体が冷える
やばい
なんども体験した症状

「ちょっとすみません!」
言い終わらないうちにトイレの洗面台に立つ

「ゴホッゴホッ…………」
口に広がる鉄の味
何度味わっても好きになれない味
「あ……………」

なんで、
なんで、今更

手に映るのはまるで絵の具のような赤色

「なんで、治ったって………………」
そこで思い出した

専属医の人が言っていた言葉

“今治ったからと言って安心しないでください”

“病気の原因がわからないため”

“再発の可能性があります”



「さ、いはつ…………」





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