嘘は取り消せない
今日は部活が夜まであるから
病院に行けない
「どうしたんだよ、湊
そんな難しい顔して」
「そうだぜ、ほら、飯食えよ」
「あ、ごめん」
桜姉が心配で気が気でない
授業にも集中出来ないし
「お前、姉ちゃんが大変なんだろ?」
「え、うん」
「俺らは少し会ったことないけどいつも湊に
世話になってるからな 千羽鶴作ろうぜ」
「ありがとう 祐翔、いずみん」
すごくいい友達持ったな……
祐翔も、いずみん……衣純も兄弟を幼い頃に亡くしている
桜姉には一回だけ会ったことがあった
その時、桜姉はまるで自分の弟のように
接していた



「お前の姉ちゃん、助かるといいな」
「助かったら祝おうぜ、俺らだけでも」
「本当にありがとな」


雪の中、夜遅くまで練習した
バスケ部に入ったのには二つの理由がある
一つ目は、冬でも夜遅くまで練習があるから
俺はバスケが好きだから、夜まで練習して
早くうまくなりたかった
二つ目は、蛍さんがやってたから
桜姉と一度一緒に試合を見に行った
その時の蛍さんが凄くかっこよかったから

「よし!」
「うぉお! 急にどうした!?」
「いえ、気合を入れ直しただけです」

桜姉はバスケを見るのが好きだと言った
だったらたくさん練習して、桜姉が
目を覚ました時、うまくなったところを
見てもらおう
父さんにも、母さんにも、樹兄、九ノ瀬さん
そして蛍さんにも、


俺は絶対桜姉が目を覚ましてくれるって
信じてるから




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