ミステリアスなユージーン
第二項目

ユージーンはエ○い

∴☆∴☆∴☆∴

で、再び現在。沙織と家飲みの続きなんだけれども。

「じゃあSD課の新入社員の歓迎会は明日の夜からなんだ」

沙織はカシュッという音をたてて新たに開けたハイボールの缶を一口飲んで私を見た。

「そう!幹事の安藤君が張り切っちゃって。なんでも従兄が独立して居酒屋を始めたんだって。で、そのオープンが明日でさ」

「へえー、いいじゃん!レビュー待ってるわ。良かったら私も行く」

コクコクと頷いた私に沙織がニヤリと笑う。

「ユージーンとあんたの激闘も気になるしね」

「激闘って!別に敵同士じゃないし!」

焦って缶を置く私に沙織が口角を引き上げたまま言葉を返す。

「この間さ、社食で私が先に帰ってからのあんたと佐渡君の会話を聞いてた後輩がさ、『恋の匂いがしてた』って言ってたけど?」

不覚にもその言葉に胸がゾワリとした。

ここで重要なのは、佐渡君の私に対する感情に、『恋』のコの字もないという事実だ。

したがって『恋の匂い』の正体は、彼に見惚れていた私の視線を感知した第三者の感想であって……。

何とも気恥ずかしく、私は沙織を見ずにサラッと答えた。

「いや、ビジュアルだけがどうしても私のドストライクでさ、思わず見つめちゃうんだよね」

「ふうーん」

……凄くネットリとした『ふうーん』だなあ……。

なんと言葉を返してイイかわからず、私はビールに手を伸ばした。

「ところでどうして『ユージーン』なの?」

少しだけ話がそれてホッとする。

「昨日の朝、佐渡君が携帯で話してるの聞いたんだけど相手の声が駄々漏れで、『ハイ、ユージーン!』て言ってたから」

「へえー、それでユージーンか」

「そ。外国人みたいだったよ」

「じゃあ、歓迎会で恋のハプニングが起こるの期待してるから報告は必ずするのよ」

……結局話はそっちに戻っていくわけ?

私は少し口を尖らせると、沙織の額を指で弾いた。
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