キミは甘のじゃく
「まったく……普段は家に寄りつきもしないのにこんな時だけ顔を見せおって……。自分の孫ながら薄情者だな。これだから眞琴には任せられんと言っておるのに……聞き分けのない奴だ!!」
ブツブツと恨み言を呟きながら点滴を振り回す態度が、わからずやの老人そのもので少なからず幻滅してしまう。
……歳をとると、こうも頭が固くなってしまうのか。
どちらも子供じゃないんだから、いい加減にしてよ……。
私はグッとバッグの持ち手を握りしめ、確固たる信念を持って告げた。
「彼は薄情者じゃありません」
病室に私の声が響き渡ると、おじいさんは目を大きく見開きこちらに見入った。
「彼は仕事で忙しいのに私のために銀座のデパートの行列に並んでくれたし、旅行にも連れてってくれました」
本当の薄情者なら訳あり婚の妻のことなんか放っておくだろうに、古賀くんは決して私をないがしろにしなかった。