キミは甘のじゃく

「さくら?あなた、聞いているの?」

「へ!?」

ふいに肩を叩かれ、驚きのあまり手が滑った。

気づいた時にはガシャンと湯呑が倒れ、緑色の液体がテーブルにジワジワと広がっていた。

「あらあら大丈夫?」

「すみません……」

粗相をしてしまったという恥ずかしさで、かあっと顔に朱が走る。

(もう、やんなっちゃう……)

古賀くんの前でヘマをするなんて!!

どんな嫌味を言われるか分かったもんじゃないと戦々恐々としていると、古賀くんが早速動いた。

「人を呼びましょうか」

意外や意外。彼は個室の片隅に置いてあった電話を取ると、受付に事情を説明して人を寄越してくれるように頼んでくれた。

(てっきり……罵られるかと思った……)

古賀くんの紳士的とも言える対応に、何だかホッとした。

そうよね、古賀くんだっていつまでも昔のようないじめっ子のままでいるはずがないのよね……。

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