キミは甘のじゃく

「ほほう……何でも言うこと聞くと……?」

「わ、私!!帰る!!」

怪しい雰囲気を漂わせる古賀くんの元から一目散に逃げだそうとしたが……。

「上等だぜ!!」

「きゃっ!!」

……言うが早いが、ひょいっと抱え上げられ即座に捕まってしまった。

「“やっぱり取り消し”なんて言わせないからな!!」

「やだやだ離してっ!!」

「安心しろ。俺はこう見えて優しい男だ」

「うそ!!絶対にうそ!!」

優しい男の人は私のことをいじめたり、脅したりしないもの!!

古賀くんは店員さんが何事かと目を白黒しているのを尻目に、私を抱えたままクルクルと軽やかなステップを踏む。

私は振り落とされないようにぎゅっと首元にしがみついた。

上機嫌の今なら言うことを聞いてくれるかもしれないという、一縷の望みをかけて震える声でお願いした。

「あ、あの……。お願い……かすみには何もしないで……」

「あ?お前、まだあの話を信じてたのかよ?」

「え!?」

「あんなのただの脅しに決まってんだろう?」

開いた口が塞がらないとはまさにこのことである。

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