視線から始まる
「そうだ、瀬那ちゃん。今日放課後空いてる?
翔と棗とカラオケ行かない?」
「生徒会はいいの?」
「うん、今日は生徒会は休み」
「そうなら、いいよ。予定ないし」
「やった、じゃあ放課後ね」
そして放課後、帰る準備をしている瀬名の教室へ、二人の男子生徒が顔を出した。
途端に湧き上がる女子生徒達のざわめき。
「会長と棗君よ」
そこかしこで女子生徒達がきゃあきゃあと騒いでいる。
それは枢を始めとした三人に対するのと同じような歓声だ。
「瀬那、美玲、帰るよ」
瀬那と美玲の名が呼ばれると、羨ましげな視線が投げかけられる。
「今行くー。行こう瀬那ちゃん」
「うん」
鞄を持って、二人の所へ行く。
神谷翔と西城棗。
柔和な微笑みがよく似合う翔は、この一条院学校の生徒会長。
明るく人当たりも良く、運動も勉強もできる彼は、その人気でもって生徒会長に任命された。
そして隣にいる棗。
大人しく地味な印象のある棗だが、よくよくみればとても可愛らしい顔をしている。
それが嫌で眼鏡と髪で顔を隠しているのだが、隠しきれていないのが現状だ。
書記を務める棗は、会長の翔と副会長の美玲と共に、絶大な人気を集めている。
それは一条院枢、和泉瑠衣、神宮寺総司のノワールのトップ陣と二分するほど。
女子生徒のほとんどが生徒会派かノワール派かと言われている。