金木犀の季節に





「結果発表されたって!」


帰り際、すれ違った女性が子供に向けて声をかけていたのが聞こえた。
今までで一番いい演奏ができたとは思うけど、本選には出られないだろう。
感情的になりすぎてしまった。

だけど、別に気にしない。

コンクールで勝つことはこの先に役立つけれど、目指すところは勝利じゃない。


今から帰る、と家族に連絡しようとしたとき、
「花奏ちゃん!」
先生の声がした。
「結果見た!?」
「見てません」
「どうして!?」
「いやあ、きっと載っていないと思うので」

先生はいきなり、私の手をとって走り出した。

「あれが結果。早く見て」

長い指が指している、人だかりの先の紙を見て、絶句した。



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