冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
ドッ!
横合いから飛び出してきた影に体当たりをくらい、リアネルは勢いのまま無様に蘭の花壇に突っ込んだ。

リュカ、とクラウスが名を呼ぶ。
「俺だけで片付けられる」

「クラウス様が相手をされるまでもありません、こんな輩は」
ぽんぽんと服についた埃を払う。

花と泥にまみれてリアネルがうめき声をあげている。

「・・お前なんかが・・・薄汚いドブネズミが・・・わたしに指一本触れることも・・・」

「リュカ、この下衆野郎を縛り上げてある手下どもとまとめて、丁重に送り返せ」

「かしこまりました」

「お前が金と暇を持て余してどのような趣味、嗜好を持とうと、それはお前の勝手だ」
うなるリアネルにクラウスが言葉を投げる。

「だが俺は坊ちゃんの火遊びに付き合ってやるほど暇じゃない。去れ、そして二度とここへもフロイラへも近づくな」
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