冷徹侯爵の籠の鳥~ウブな令嬢は一途な愛に囚われる~
なんといっても、ルシアナは自分とは違う美しく賢いお姫様なのだ。
広くきれいなお屋敷に住んで、そのおとぎの国に自分はたまたま入ることを許された。そんな感覚だった。

楽しそうなフロイラの様子に、母は心配しつつも屋敷への訪問を止めることはなかった。

そのひと夏の多くの時間を、ルシアナとフロイラは屋敷の庭で過ごした。

目をつぶれば、今でもありありとその庭の風景を思い描くことができる。
子どもにとってはなんとも魅力的な庭園だった。

芝生が広がり、そこここに半月型の花壇が作られ、とりどりの花を咲かせている。
ポプラの木がすっくりと立ち、太い枝にはブランコが下がっている。

イチイのこんもりとした枝が作る木陰は涼をもたらし、ツゲの茂みはトンネルのような小径を作って、訪れるものを誘う。
耳をすませば小鳥のさえずりが聞こえてくる。
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