お見合い相手は冷血上司!?
「亜子、ちょっと!」

 私を呼ぶ声がして辺りを見渡すと、オフィスの隅にある給湯室から桃が顔を覗かせている。

 桃? 給湯室なんて滅多に行かないのに、珍しい。

「どうしたの?」

 駆け寄ると、彼女は私を給湯室へと引きずり込んできた。辺りに誰もいないことを確認すると、扉に鍵までかけている。

「な、何があったの?」

 挙動不審な行動に、思わず目を瞬かせた。

「亜子。私さっき、部長と専務が話してるの聞いちゃったの……」

「何を?」

「亜子。落ち着いて、気を確かに、驚かないで聞いてね……」

 私の両肩に手を置いた彼女の緊張で強ばった表情を見ていると、思わず私にも緊張が移る。

 彼女が息を呑む音が、聞こえてくるようだった。
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