お見合い相手は冷血上司!?
 やりどころのない羞恥を感じて、眉を下げる。
 揺れていた肩はすぐに止まってしまったけれど、月明かりに照らされたその横顔は、まだ口元が柔らかく綻んでいた。
 見つめていると、前を向いていたはずの彼は『何だ?』と顔を顰める。

「……お言葉ですが課長。課長もこうして普通に感情が表に出されている方が、素敵だと思います」

「――お言葉だ」

 食い気味に、あっさりと切り捨てられてしまう。
 しかし、彼の額に黒瀬川が浮かぶことはなくて、どこか嬉しそうに見えるその顔は、真っ直ぐに道の先を見つめていた。

 今はほんの少しだけれど、課長という人を知りたいと思う。
 恋愛感情には程遠い感謝の気持ちしかないけれど、今私の胸が温かく満たされているのは、紛れもなく課長のおかげだ。

「くだらんことばかり言っていると、夕食は照明の明るい店にするぞ」

「す、すみません!」

 ……やっぱり、課長はこうでなければ調子が狂う。
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