とりまきface
 菜々は、大手電機メーカーの開発部に配属され三年になる。

 少しキツイ印象を与える美人だが、仕事熱心で笑顔は屈託のない可愛らしいものだ。

 菜々がこの会社を選んだのも、空港に近いからだ。
 会社の行き帰りにも飛行機が見られる、菜々にとっては最高の幸せだ。


 今日から、開発部に新しい部長が配属される事になっていた。

 アメリカから戻ってくるやり手だとは聞いている。

 菜々は、やりにくい人でない事を祈った。



 開発部のドアを開け、オフィスに入ってくるスーツが目に入った。

 一斉に皆がその男へ目を向けた。


「おはようございます」


 少し低いが濁りのない声の主は……
 

 展望台の彼だった……




 白石遥人三十一歳、菜々の所属する開発部の部長になった人だ。


 笑顔も無く、クールな挨拶。

 美男とはこの人の事だと思うほどの綺麗な肌……

 その上、背も高く肩幅もがっちりしていて男らしい……


 菜々は、ただ、呆然と口を開けて見ているだけだった……


 しかし、次の瞬間どこからともなく女性社員の視線が、遥人に向けられている事に気が付いた。



 それは、その日のお昼に起こりだしたのだ……
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