僕と家族と逃げ込み家
第1話 僕と家族と恒例の家出

§ 僕の家族

四月に入った途端、寒さで縮こまっていた身体が緩々と解れていく。
レースのカーテンを揺らす風も、差し込む陽射しも、柔らかで温かい。

あぁ、静かな昼下がりだ。

こんなふうにソファに寝転がっていると、日々の慌ただしさがはるか彼方に飛んでいく。

バックミュージックはパソコンのキーを叩く無機質な音だけど、それがテンポよく耳をスルーしていく。

極楽とはこんなありふれた“のほほん”とした時間のことをいうのかもしれない……とガラにもないことを考えた途端、雑誌をめくる手が止まる。

ふぁぁぁぁぁ。

極楽もいいけど、やっぱり暇だ。
春休みも中盤。遊びは一通りやり尽くした。

たりぃ。せめて部活でもあれば――袴姿で的に向かって矢を射り皆中でもすれば――スカッとするのに。

悲しいかな、学校から『四月一日から新学期までの間、校内への出入りを禁ずる!』というお達しが出ていた。

県下でも名高い濱永高校は歴史的にも古く、校舎はかの有名なヴォーリス建築だという。

百数十年の歴史を誇る由緒正しい建物、ということだが単にボロッなだけ。
だからだろう。県から耐震補強工事を命じられたのは……で、上記の期間にと相成った訳だ。

何もこんな時に校舎の補強なんてしなくていいのにと思うのは生徒だけで、公人は春休みだからこそ決行したのだろう。だが、我々生徒には本当に迷惑な話だ。
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