僕と家族と逃げ込み家
じっと父の写真を見つめていると、突然耳元で声がした。
「ゴミ屋敷って何? トヨ子ちゃんがどうしたの?」
「うわっ!」
「うわって、何? 幽霊にでもあったみたいに」
いつの間にか母が隣に座っていた。あからさまに不機嫌な顔だ。
飛び出しそうな心臓を、口から出ないように両手で押さえながら後退る。
幽霊の方がどんなにカワイイか。まったく神出鬼没の魔女め!
心臓がドクドク音を立てる。今の、全部は聞かれていないよな?
だが、僕の心配をよそに母の意識はすでに他に移っていた。
「ねぇ、トヨ子ちゃんって言えば、遅いと思わない?」
壁の時計を見つめる。
「……ん?」つられて僕も見る。
「もう十時よ。遅いでしょう? トヨ子ちゃんが遅刻だなんて信じらんなぁーい」
同級生の女子のように、語尾を少し上げながらも母は「よいしょ」と掛け声と共に立ち上がる。
綾小路トヨ子。通称トヨ子ちゃんは母のアシスタントで秘書で、おまけに我が家の必殺お助け人だ。
母がデビューして一年目に、編集という立場を退き『何でもします! 雇って下さい』と押しかけてきた。
そう! あの『若月とまり』というペンネームが生まれた時に、パチパチ手を叩いたのがトヨ子ちゃんだ。
「ゴミ屋敷って何? トヨ子ちゃんがどうしたの?」
「うわっ!」
「うわって、何? 幽霊にでもあったみたいに」
いつの間にか母が隣に座っていた。あからさまに不機嫌な顔だ。
飛び出しそうな心臓を、口から出ないように両手で押さえながら後退る。
幽霊の方がどんなにカワイイか。まったく神出鬼没の魔女め!
心臓がドクドク音を立てる。今の、全部は聞かれていないよな?
だが、僕の心配をよそに母の意識はすでに他に移っていた。
「ねぇ、トヨ子ちゃんって言えば、遅いと思わない?」
壁の時計を見つめる。
「……ん?」つられて僕も見る。
「もう十時よ。遅いでしょう? トヨ子ちゃんが遅刻だなんて信じらんなぁーい」
同級生の女子のように、語尾を少し上げながらも母は「よいしょ」と掛け声と共に立ち上がる。
綾小路トヨ子。通称トヨ子ちゃんは母のアシスタントで秘書で、おまけに我が家の必殺お助け人だ。
母がデビューして一年目に、編集という立場を退き『何でもします! 雇って下さい』と押しかけてきた。
そう! あの『若月とまり』というペンネームが生まれた時に、パチパチ手を叩いたのがトヨ子ちゃんだ。