僕と家族と逃げ込み家

§ カフェ『逃げ込み家』

我が家は階数から言えば十三階にある。

だが、『13日の金曜日。ジェイソンが出てきそうだから、いや!』とよく分からない母の言葉で、『十三階』とは呼ばず『屋上』と呼んでいる。

当然エレベーターのボタンも『R』だ。

下向き三角のボタンを押し、赤いランプが付くのを確認してからデジタル方式のインジケーターに視線を移す。上向きの矢印と⑩の数字に「すぐ来るな」と独り言ちる。

ちなみに、このマンションにはエレベーターが二基あり、我が家と分譲階には専用キーで動くエレベーターでしか行けない。

父が亡くなった時、こんな生活を送る日がくるとは夢にも思っていなかった。
それもこれも、あのトヨ子ちゃんが母のバックにいるからだと思う。

だって、官能小説というジャンルにもかかわらず、映画やドラマ、それに、アニメーション化してしまうのだから、いやはや、彼女の手腕は実にお見事と言わざる得ない。

マンションの完成は一年前の三月。先月、早くも一周年を迎えた。

一階と二階はテナントが入っていて、三階から九階は賃貸マンションで十階から十二階は分譲マンション。そして、屋上が我が家だ。

部屋は全室南向きで、おまけに駅に近く商店街の並びにある。そんな条件の良さでずっと満室御礼だ。

本当にトヨ子ちゃん様々だと思っていたら、チンとエレベーターが到着する。
中に入り、閉のボタンと①のボタンを押す。

一階と二階のボタン横には、テナント名が書かれたプレートが貼ってある。
入居希望はたくさんあったが、選考は母基準だった。
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